「これまではメーカーに何度も同じ問い合わせをしてしまうことがあったのですが、ナレッジリングの導入によって社内情報共有がスムーズになりそうしたことがなくなりました」。こう語るのは、歯科機器の卸売を手掛ける日本歯科工業社で営業本部 営業1課の課長を務める北別府修作氏だ。ナレッジリングとは、CBITが提供するクラウド型のFAQシステムで、日本歯科工業社では2019年秋から本格的に社内の情報共有に活用している。
株式会社日本歯科工業社 営業本部 営業1課 課長 北別府 修作 氏
同社は、メーカーから歯科機器を購入し、ディーラーと呼ばれる歯科医への機器販売企業に商品を卸売する。歯科機器には様々な新製品の発売などの情報があり、発売日、スペックなどの情報をディーラーから確認されることが多い。同社では従来からグループウエアを導入して社内情報共有を図っていたが、数カ月よりも前の情報を探すときの検索性が高くなく、資料を見つけることができなかったり時間がかかったりしていた。その結果、時と場合によってはメーカーに同じような内容を何度も問い合わせする効率の悪さが生じていた。
システムを担当する業務本部システム課 課長の岡田賢治氏は、「顧客であるディーラーからは書面での情報を要求されることが多く、画像情報を蓄積して共有、検索できる仕組みを探していました」と振り返る。そうした中で岡田氏が「社内情報共有」のキーワードでネットを検索していたとき、CBITのナレッジリングがヒットした。「ホームページを見て、わかりやすいなと感じました。その上、同様の社内情報共有ソリューションはあまり検索でも見かけなかったので、電話をするまでのハードルは高くありませんでした」(岡田氏)。
株式会社日本歯科工業社 業務本部 システム課 課長 岡田 賢治 氏
導入を検討したところ、ナレッジリングのSaaSプランは、初期費用は9万8000円かかるものの、月額9800円の基本料金に120円/アカウントの従量料金で使えることがわかった。北別府氏は、「安すぎて後からオプションの請求があるのではと思ったほど。説明した役員にも『安いけれど本当に大丈夫なの?』と聞かれました」と笑う。実際にどのような効果があるのか、30日間の無料トライアルで検証することにした。
トライアルは、営業担当者と内勤の受注営業課から10名ほどをメンバーに選び実施した。岡田氏は、「トライアル期間には、まず主要メーカーの情報に絞って、1年分を登録していきました。その間は従来のグループウエアと双方に登録することになって、大変でしたね」と苦笑する。もともと岡田氏は、FAXなどで届いた書面をPDF化して保存してはいたが、一気にナレッジリングへの登録作業が膨らんだためだ。しかし、苦労の甲斐があって、トライアルの評判は上々だった。
ユーザー部門としてトライアルに参加した営業本部 受注営業課 チーフの川名恵子氏は、「トライアル当初から問題なく利用できました。ディーラーからは電話で問い合わせがあって書面をFAXでほしいというような要望が多いのですが、ナレッジリングでは検索が容易で、見つけた書面を印刷してすぐにFAXできて便利になりました」と語る。これまでは、今後使いそうな書面は印刷して各自がファイリングするなど工夫を凝らして、必要に応じて探し出していたというが、そうした手間が省けるようになった。「1年前の書面でもすぐに見つかって助かります」(川名氏)。
株式会社日本歯科工業社 営業本部 受注営業課 チーフ 川名 恵子 氏
北別府氏も、ナレッジリングのトライアルをするまでは「問題が顕在化していたというわけではありませんでしたが、潜在的に課題があったということでしょう。メーカーへの問い合わせも減りましたし、スマートフォンからも検索できるので営業担当者は出先から自分で書面の情報を確認して顧客に返事ができるようになりました。導入には両手を上げて賛成しました」と振り返る。そして2019年秋にナレッジリングの本番稼働が始まった。
本番稼働から約1年、すでに2000を超える書面がデータとしてナレッジリングに蓄積されている。取引のあるメーカーは150社を超えるため、1社あたり10数通の書面があっただけでも2000記事といった規模になる。岡田氏は、「当初のアップロードは大変でしたが、これまでもPDF化して会社ごとのフォルダに分類していたので、ルーティンの作業になればナレッジリングを導入したことによる手間はさほど増えていません」という。
継続して運用する間に、社内向けの案内やニュースといった情報もナレッジリングにまとまり、情報を検索するときはナレッジリングを利用するという形が定着してきている。「既存のグループウエアは、社内情報共有の役割を離れ、スケジュール管理や施設管理などに専念する形態になってきています」(岡田氏)。
導入の効果について北別府氏は、「顧客からの問い合わせにスムーズに応えられています。特に古い資料は探すのに時間がかかっていましたが、今はタイムリーに回答できるようになりました。こうしたレスポンスは1つ1つが評価されることはないですが、トータルの企業のパフォーマンスとして『スムーズに答えてもらえるね』ということが、顧客からの選択時の評価につながっていると思います」と語る。現場で利用する川名氏も、「メーカー名とセールなどのキーワードですぐに検索できるようになって便利になりました。紙に印刷してファイルするような手間もなくなって助かっています」という。
そんな中で要望として岡田氏は、「現在は顧客からの問い合わせに、ナレッジリングで検索した書面を印刷し、それをFAXしています。検索で見つけた書面をそのままFAXできる機能が追加されたら、さらなるペーパーレス化にもつながりありがたいですね」とFAX連携機能を掲げる。
ナレッジリングを社内情報共有ツールとして導入してから数カ月後、世界を新型コロナウイルスが襲った。そのときには同社でも営業担当者は半数程度がテレワークで業務を遂行することになった。「ナレッジリングが本番稼働して慣れてきていたタイミングだったので、テレワークでもきちんと情報を確認して顧客に届けることができました。コロナを想定して導入したソリューションではないのですが、振り返ってみたらいいものを導入しておいて良かったと感じています」(北別府氏)。
クラウドFAQシステムであるナレッジリングの導入は、これまであまり見えていなかった「当たり前」の仕事の形を変えて効率化するという効果に加えて、いざというときに場所を問わずに業務を継続できるインフラとしても役立った。「ナレッジリングを使うとこんなに便利になるということを、顧客であるディーラーにも紹介していきたいと思っています」と北別府氏がいうように、歯科機器業界での利用が広まっていく可能性も高まっていきそうだ。